はたらく図鑑
地域おこし協力隊って、なんだ?


「はたらく」にフューチャーしたオウンドメディア
Vol.2、長浜市地域おこし協力隊の中村凜之介さん。
「地域おこし」という深くて数えきれない「課題」に対しての中村さんの地域と大学生の懸け橋としてはたらく中村さん。
「学生」と「地域」の懸け橋を担う中村さんだが、一体どんなことをしているのか。そして、はたらく中で、どんな変化と魅力があるのか。あなたの“はたらく”をおもしろくするためのヒントを伺います。
<話し手>
-中村凜之介さん-滋賀県長浜市役所 市民協働部市民活躍課
北九州市立大学卒。大学時代は、野球に本腰を入れ卒業後、東京の株式会社マイナビへ就職。2022年の10月に退職し、現在長浜市地域おこし協力隊へ入社。長浜市の「地域」と「大学生」の接点づくりというテーマに惹かれ、イベント運営や地方企業の採用サポートに取り組んでいる。
-長浜市地域おこし協力隊
地域おこし協力隊とは、地域の課題を解決するために生まれた組織である。長浜市は、「地域」と「大学生」の接点づくりがテーマである。コミュニティづくりや地域の空き家を生かしたミッション、学生が主体的にやりたいと思うイベント企画、資源を生かした環境づくりなど。日々課題に対するアプローチが絶えない。
地域おこし協力隊-長浜市- (nagahama.lg.jp)
地域に関わることで、「ここに来てよかった」と思ってほしい。
-地域課題解決が地域おこし協力隊の役割だということですが、長浜市の課題って何ですか。
長浜市は、高校生までの若い人が多いです。地元の学生たちは、高校卒業して他県に出て行ってしまいますが、大学生は割と他県から来てくれています。「じゃあ、とんとんでいいじゃん」というわけではないんです。なぜなら大学生たちは、地域と関わらなくてもいいのですから。アルバイトを頑張るでも、サークルを充実させるでもいいのです。せっかく来てくれているからこそ、大学生をいかに地域に触れて楽しませられるかが市として設定している課題になります。
地域おこし協力隊として地域課題を解決する
-「学生」と「地域」の懸け橋といっても、どんなことをしているのでしょうか。
例えば、廃校でサバイバルゲームをするイベントを大学生と開催しました。「サバイバルゲーム」というと、実際に球が出てくるのをイメージされると思いますが、あれは痛いと思い赤外線を使って、頭に受信機をつけています。当たると音が鳴るというとてもハイテクなサバゲーになりました。(笑)
自分たちで道具をすべて買いそろえるのはしんどいので、道具を持った団体がないか探してみると、滋賀大学の大学生が道具をそろえてサークルとして活動していました。「おもしろいことやってるな」と思い「これイベントでやったら結構人集まりそうじゃない?」とサークルの部長さんに相談しました。部長さんも了承してくれて、無事開催されました。彼らは、自分たちが楽しいからと自分たちのバイト代で道具を買いそろえていました。実際のイベントは一人2,000円での参加にして、参加人数は校舎のキャパを考えて25人としました。地域おこし協力隊として、大学生と一緒にやらせてもらい、売り上げ-経費でお金は、そのままサークルに受け取ってもらいました。
彼らも、校内でのイベントは実施していたようなのですが、あまり外部の人に向けてお金をとってイベントを開催することがなかったようです。なので、いい経験にしてもらいたいし、今までアルバイトを頑張って稼いだお金で備品を買っていて、僕は彼らに無理をせずにちゃんと自分たちにメリットをもってやってもらいたいと思っていました。そこにこのイベントはすごくはまったいいイベントだったんじゃないかと思います。
▼大学生と廃校でサバイバルゲームをしている様子
▼長浜駅前で開催した就活BBQイベントの様子
▼滋賀県立大学で開いた就活イベントの様子
大学生でしかできないチャンスが転がっている。
-中村さんにとってのやりがいってなんですか?
僕が、始めた理由にもなるのですが、大学生って関わる人を選べるじゃないですか。サークルにずっといるということもできるし、アルバイトを同じ場所で4年間続けることもできる。それがすごく「もったいない」と思っていて、自由に関りを選べるからこそいろんな大人に会ういい期間だと思っています。僕自身ずっと4年間野球をやってきて、高校野球をもう一度やったみたいな感じでした。振り返るともったいなかったなって思います。せっかくいろんな大人と会う機会や自分の知見を広げるチャンスがあったのに、それができなかったんです。
実際、そうゆうことをしてこなかったことで就活に困りました。どんな仕事があるのかもわからなかったし、こんな大人になりたいというのも、野球の世界でしか見てこなかったので、もっと今の大学生に視野を広げる機会を作りたいと思いました。
僕のやりがいは、今まで大学生が校内でやっていたものを外に出て、お客様とやり取りしている様子や大学生が主催となってイベントを運営している様子を見られることです。
あとは、企画勝負なところがあって、大学生と地域を結ぶのが僕の仕事なのですが、そこでは相性みたいなものがあると思っています。廃校という誰にも生かされていないカードがあって、そこに対して誰が適しているのか。組み合わせが求められる職で、それも「たのしいな」って思います。
単位が取れたらいいのか。
地域活動ってゼミとかでもあるじゃないですか。長浜市にもあって、それって講義終わったら終わりで、みんな「単位取れるから行く」といった受動的な姿勢で選択しているんです。「それっていいの?単位取れたらなんでもいいの?」という問いがあって、この動機を課題として純粋に「おもしろそうだから行ってみた」に変えたいです。ボランティアに参加する学生も多くいると思うのですが、その子たちってすごく意識が高いっていうか。「なにかしたい!」っていう大学生が来てくれるのももちろん嬉しいです。しかし、いろんな大学生に来てもらいたいってところでいうと、楽しませることで層を広げられると考えています!
遠慮せずに、今しかない経験を増やしてほしい。
-大学生と大人をつなぐ難しいところってどんなところですか。
大学生って、大人から言われたら、正しいと思ってしまうじゃないですか。それが裏目に出てしまっていると思っていて、大人が「こう」といったものを大学生がやるという活動が結構多いんです。これが大学生の主体性を奪ってしまっている側面があるのではないかと考えています。大学生の活動の延長線上で地域が企画できればいいなと思っていて、「地域がこうしてほしい」から大学生に「こう関わってもらう」ではなく、大学生が「やりたいこと」を地域に結び付けたいです。
大学生の主体性がないまま地域の活動に参加したとしても、地域を嫌いになってしまうことだってあります。「とりあえず来てほしい」ではなく「どうしたら学生に来てもらえるか」というところは難しいポイントです。
他にも、お互いがお互いに「関わってもいいのかな?」という雰囲気もあります。大人でいうと、話しかけに行ったら「怖がられないかな」とか「話し合わないかな」などがあって、学生も遠慮してしまうことが多いので、「関わってみたら意外といける!」という経験を増やしてあげたいと思っています。
大人とのつながりを恐れずに。
-大学生に戻れたら、人と会う以外になにかやりたいことはありますか?
自分にすべての責任がある活動をやってみたいです。そういう経験が多い人は、考えて動けるようになるので、分かるようになるんですよ。僕はそれが、めちゃくちゃ大事なことだと思っています。あとは、人と会うことに近いのですが、年が離れた人とたくさん話すことがやりたいです。僕は年の離れた大人が先生や監督しかいなくて、そこではちゃんとした上下関係がありましたが、イベントを企画するとなると対等にコミュニケーションを取りにいかなければならないのです。こんな活動をしていれば、今の僕に生きた経験になると思います!イベントだけでなくても社会に出たら、対等なコミュニケーションを取り合う場や機会って増えていきます。
未来を見据えた「今」を大切に生きる。
-中村さんの中で、大事にしているものってなんですか?
自分の中で役に立つなと思うことを広めたいって気持ちが強いです。幸い、今役に立つものや提供できるものを選べます。大学生に地域の話をしに行くときも、この人をこの大学生に紹介したいという「この人」という選択肢が多いです。なので、やっていることが役に立っているなと思える瞬間が多く、それがすごく好きでその瞬間を増やせる生き方をしたいです!
他にも今に集中できることも大事なことだと思っています。大人になってきて、先のことに不安になることが増えていきます。僕は、今に没頭できることが理想を叶える生き方だと思っています。そのために瞑想が結構いいなって思っていて、座って息をしているだけなのですけど普通にやっているといろんなことを考えてしまいます。しかし、いろいろなことを考えたあとでも、呼吸に集中することが瞑想です。
瞑想をやっていると今やっていることに集中する癖がついてきました。そうすると、目の前のことが進みやすくなっていくので、瞑想はおすすめです。(笑)
自分の強みを生かし、人の役に立つことが自分の本質
-中村さんにとってのはたらくってなんですか?
自分の強みとして、人の役に立つということがあります。例えば、僕が事務作業を極端に苦手かつ嫌いだったとしても、実際にその仕事に就いていれば、なんらかの役には立っています。でもこれ、自分のことをすり減らしていることでもあると思います。これも一つのはたらき方で、いいものかは分かりませんが僕はこれが苦なくやれるので、人の役に立つということが僕の強みであり、はたらき方です。
あとがき
今を最大限に活かそう!
中村さんは、「大学生には今しかできないことがたくさんある」と強調します。授業やアルバイトだけではなく、地域活動や大人との交流を通じて、新たな視点やスキルを学べる貴重な時間です。「自由に動ける大学生活を最大限に活かしてほしい」と、学生たちにエールを送っています。

- 会社名滋賀県長浜市役所
- 事業内容地域課題解決、「地域」と「大学生」の接点づくり
- 役職市民協働部市民活躍課
- 名前中村凜之介